ブログ(仮)
Posted by l.c.oh - 2005.12.06,Tue
- 恩田 陸
- 球形の季節
恩田陸です。完璧にはまる作家ではないのですが、みんなそれなりのクオリティを持っているので、最近よく読んでいます。
東北の地方都市を舞台に、高校生の間に流れる奇妙な噂をめぐって展開する「学園モダンホラー」です。
恩田陸は、12月1日のエントリにも書いたように、非常に器用な作家(1日のエントリはどちらかというと否定的な意味でしたが、ここの「器用」は肯定的な意味です。)だと思っています。中でも高校生を描くのが得意なように思います。出世作の『六番目の小夜子 』は高校が舞台ですし、第2回本屋大賞をとった『夜のピクニック 』(未読)も、確か高校生が主人公です。この本も高校という独特の空気を持つ空間や、高校生の不安定な心理を、上手に描いていると思います。
読み物としてもなかなかおもしろい。
12月5日 移動中に読了
★★★★☆
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Posted by l.c.oh - 2005.12.05,Mon
- 小澤 征爾
- ボクの音楽武者修行
世界的指揮者の小澤征爾が若いときに書いた自伝的エッセイです。
若いころの小澤征爾自身や他の著名な音楽家のエピソードを興味深く読みました。あと、1960年前後のヨーロッパの雰囲気や、当時留学していた日本人がどのようなことを考えていたのかもうかがえてなかなかおもしろい。
「本としては」それ以上ではないように思いますが。
12月4日 移動中に読了
★★☆☆☆
Posted by l.c.oh - 2005.12.04,Sun
- 小川 洋子
- 博士の愛した数式
第1回本屋大賞受賞作、本当に待ちに待った文庫化です。
期待にたがわぬ、非常に面白い小説でした。
80分しか記憶がもたない元数論の教授と家政婦、その息子の交流を描いた物語です。
奇妙な設定とそれを活かす構成のうまさ、美しい日本語、静謐な雰囲気という小川洋子の特徴は相変わらずです。このような小説としてのうまさもさることながら、この小説の一番の持ち味は、数論の「美しさ」がうまく小説の中にちりばめられている点にあるのだと思います。
数論については、僕も詳しいことは知らないので何ともいいがたいのですが、整数のみを対象として、外部の事情や感情を排除している点で、あらゆる学問の中でも最も「純粋な学問」と言ってよいのではないかと思います。この純粋性が、小説に描かれた博士の「穢れなき心」性と共鳴して、非常にきれいに描かれています。
普段何気なく見ている数字が「秘密」を解き明かされていくのは、興味深いものです。
映画化されるみたいですね。博士が寺尾聰というのは、なかなかナイスなキャスティングです。
12月3日 移動中に読了
★★★★★
Posted by l.c.oh - 2005.12.01,Thu
- 恩田 陸
- ライオンハート
一生に一度だけ、「時を越え、空間を越え、男と女は何度も出会う。」「切なくも心暖まる、異色のラブストーリー」(裏表紙紹介文より)だそうです。
章ごとに扉絵を掲げ、それと抽象的な関連性を持ってストーリーを展開する手法はなかなか。日本語の使い方もなかなか。ただ、「恩田陸って器用だな」という以上の感想はない。買ったときからある程度予想はついていたが、個人的に好みの種類の小説ではなかった。
11月21日 通学中に読了
★★☆☆☆
Posted by l.c.oh - 2005.12.01,Thu
- 重松 清
- 流星ワゴン
《本の雑誌》がらみでもう1冊。これは、《本の雑誌》で年間ベスト1だったそうです。
同じようなことを書きます。面白いのは面白いのですが、僕のベスト1にはなりません。
「死んじゃってもいいかな」と思っている人の元に現れて、人生の岐路になった場所にその人を連れて行ってくれるワゴン車での旅の話です。テーマは「父親」。「父親」であることに難しさを感じている人には響く小説なのかもしれませんが、僕は父親ではないのでいまいちだったのかな、と思っています。
登場人物はみんな普通の人ですが、結構魅力的に描かれています。
11月10日 通学中に読了
★★★☆☆
Posted by l.c.oh - 2005.12.01,Thu
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新潮社《本の雑誌》が選ぶ、30年間のベスト30、堂々の第1位をとった小説です。
面白いのは面白いですが、30年間のナンバー1というほどのものではないと思います。
事故で透明になってしまった証券マンの、生き抜く苦難を描いた小説、といってよいでしょう。実際透明人間になったら生きるのは大変だ、ということをうまく書いていると思います。
個人的には、外国の小説はあまり好きではありません。理由は2つあります。小説も国民性のようなものが顕著に出ていて共感しにくいことが1つ。もう1つは、翻訳の巧拙に影響を受ける面が大きいことです。
この小説は、翻訳はかなりこなれていると思います。しかし、特にアメリカの小説の場合は傾向として、人間全肯定的な雰囲気や、体全体を使って喋っているようなわざとらしい表現があることが多く、この小説もそういう感じをうけてしまったので、個人的にはいまいち入り込めませんでした。
11月7日 通学中に読了
★★☆☆☆
Posted by l.c.oh - 2005.12.01,Thu
- 筒井 康隆
- 最後の喫煙者―自選ドタバタ傑作集〈1〉
筒井康隆のドタバタ短編小説自選集。
買ってから気がついたけど、高校時代に筒井康隆にはまっていたときにほとんど既読でした。
短編小説はアイディア勝負の部分が結構あります。筒井康隆のユニークさはここで言うまでもないことだし、アイディアの活かし方もうまいので、そういう意味では短編がおもしろくないわけはないのです。
あんまりきれいな書き方はしないし、よくいわれるように「エロ・グロ・ナンセンス」なので、生理的に受け入れられない方もいるかも。
10月28日 通学中に読了
★★★★☆
Posted by l.c.oh - 2005.12.01,Thu
- 筒井 康隆
- パプリカ
筒井康隆が断筆宣言をする直前に書いた小説です。
他人の夢にジャンクションして精神を探る、夢探偵を題材にした小説です。
夢野久作『ドグラ・マグラ』の紹介に、「一度は精神に以上をきたすと伝えられる、一大奇書」とありましたが、個人的には『パプリカ』の方がよっぽど強烈だと思います。
夢と現実の交錯、というのは小説にはありがちなことではありますが、この小説ありがちな小説とは大きな差があります。
まず、後半のドタバタ感が圧倒的です。前半が面白くないわけではないのですが、これはちょっと毛色の変わった小説を読んでいるときの面白さ。先に進むにしたがって、ナンセンスさも小説のスピードも加速度的に上昇していきます。筒井康隆の本領発揮、こうなるともうやめられません。
さらに、小道具が興味深い。小道具の中でも、おもしろいのが「PT機器」と呼ばれる一群の機械類。これを使うと他人の夢をのぞいたりジャンクションしたりできるという装置類で、精神病の治療に使われるという設定ですが、もしかしたらそのうちこのような機械も登場するかもしれませんね。恐ろしい話です。
最初のほうに出てくる理屈っぽい部分が引っかかって読みにくさを感じた点もありますが、ナンセンス小説に抵抗がない方には是非おすすめしたい本です。
10月27日 自宅で読了
★★★★☆
Posted by l.c.oh - 2005.10.20,Thu
- 小川 洋子
- 刺繍する少女
小川洋子の本も、僕が読もうと思っていた文庫本は最後になりました。
短編集です。
この本の雰囲気を一言で言うなら、解説にある「安倍公房の初期の短編とも同じ圏内にある超現実小説だが、それらより何歩か現実生活に近いところにある」というのが適当でしょうか。奇怪なものたくさん登場します。
文章は相変わらず繊細でいい日本語を使っている感があります。ただ、内容として面白いか、というと、面白くなくはない、という程度ですね。話が大きく展開することもなく、結論が提示されるわけでもなく、淡々と話が積み重なっていく感じです。小川洋子の静謐な世界観が好きな方には、そこそこうけるのではないかな。
10月20日 通学中に読了
★★★☆☆
Posted by l.c.oh - 2005.10.18,Tue
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『ローマ人の物語』の文庫版第8回配本です。
第7回よりさらにマニアックな皇帝たちが登場します。
扱われているのは、AD68年夏から97年秋までです。69年に立て続けに帝位についた3人の皇帝と、フラヴィウス朝と呼ばれる3人の皇帝、一応五賢帝に名を連ねているネルヴァ帝の7人の皇帝が登場します。この後のローマ帝国最大の繁栄期、いわゆる「五賢帝時代」につながる時代です。アウグストゥス創設にかかる、外見上元老院を立てながら実際は帝政という「デリケートなシステム」が崩壊の危機に瀕したAD69年と、それを立て直したヴェスパシアヌス帝が中心に描かれています。
ちょっと切ないのは、ネルヴァ帝の扱い。五賢帝の一人として有名なこの皇帝ですが、統治はたったの1年半、やったことといえば、何もしなかったこと、といってもいいくらいにしか書かれていません。割かれているページも高々15ページ。「ネルヴァが五賢帝の一人に加えられた理由は、トライアヌスを後継者に選んだ一事のみ」という歴史家の言葉が象徴的です。高校時代に五賢帝の名前を一生懸命覚えたのはなんだったんだろう、と思ってしまいます。まぁ、五賢帝の存在を知ることで、こうやってローマの通史を読む軸になるのですから、それなりの意味はありますが、でも、学校の歴史教育の限界を感じますね。
10月17日 移動中に読了
★★★★☆
僕が(一部)書いた本が出版されました
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