忍者ブログ
ブログ(仮)
Posted by - 2025.10.08,Wed
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by l.c.oh - 2005.09.21,Wed
 予定通り、②について書きます。③はちょっと時間がなかったので、また今度。
 これは、非常に法技術的側面が強いところです。今の日本の法律を前提とした場合、どのように解釈すれば救済できるかが難しい問題だと考えられていて、それに対して最高裁判所が一定の見解を示したことが注目されます。


何が問題になったか ②「次の選挙のときに外国にいる日本人が投票できる」という地位の確認を求める裁判ができるか。


裁判所の判断
 ②できる(賛成12対反対2)


詳細
 事実関係については、15日のエントリを参照してください。
 ②に関連して少し補足をしておくと、この訴訟では、「平成10年以前の公職選挙法が違法であることの確認」と、「現在の公職選挙法が違法であることの確認」と、「次の選挙のときに外国にいる日本人が投票できることの確認」の3つの確認の訴えがなされていました。

法律

 まず、そもそも法律を改正しないこと(立法不作為)が憲法違反になるか、という問題があります。



 普通憲法違反が問題になる場合は、上の図の「現状」が正しいか否か、という形で問題になります。この場合、他にどのような選択肢があるかは深刻な形では問題になりません。一方、立法不作為が憲法違反だと主張するのは、上の図で言えば、選択肢2を選ばなかったことを問題にするということです。この場合は、他の選択肢が考慮に入ってきます。他の選択肢にも、それぞれ利害があるわけで、それを検討・調整するのには、裁判所は向いていないと考えられています。なぜなら、裁判所は是か非かの判決を出すのが仕事で、是か非かでは割り切れない複雑な利害調整をするところではないからです。このようなことは、一般的には国会での議論ですることだといえます。そこで、立法不作為が憲法違反になるのは、選択肢2を選ぶことが憲法で明らかに要求されている場合(立法義務がある場合)に限られると考えられています。
 ちょっとわかりにくいですかね。要は、「しないこと」が憲法違反になるには、「すること」が憲法で明らかに義務付けられている場合だけだ、ということです。


 次に、立法不作為が憲法違反であるという判決を、裁判所が出せるかという問題があります(国会の裁量については、15日のエントリを参照してください。)。現在の法律上、立法不作為違憲訴訟という形態の裁判は用意されていません。そこで、どのような訴えをすれば、立法不作為を争えるかが問題になってきます。

 まず考えられたのが、「確認の訴え」を使う方法です(他に考えられたものとして、国家賠償法を使う方法がありますが、これについては③を書くときに説明します。)。

 民事裁判では、求める判決の内容によって3種類の訴えがあります。「給付の訴え」「確認の訴え」「形成の訴え」がそれです。「給付の訴え」は、例えば、貸したお金を返してくれと訴えるような場合です。これで裁判に勝つと、強制執行をかけることができます。「確認の訴え」は、例えば、ある土地が自分のものだということを明らかにしてくれと訴える場合や、100万円の借金返済を相手が要求してきたときに50万円しか借りていないことを明らかにしてくれと訴える場合です。「形成の訴え」はちょっと特殊で、裁判所が判決を出さないと権利関係が変わらない場合です。例としては結婚を取り消す(離婚ではなく)場合などがあります。
 この事件では、「確認の訴え」が使われました(正確には、この事件は民事訴訟ではなく、行政訴訟という類型に入りますが、あまり差はありません。)。ただ、確認の訴えをしたとき、裁判所から判決をもらうためには、「確認の利益」というものが必要です。「確認の利益」は、「現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のために適切かつ必要な場合(最高裁判所の言い回し)」だけしか認められません。なぜなら、法律関係はいろいろ変化するものなので、過去の法律関係を確認しても今もそのままだという保障がなく、普通はあまり意味がないからです(「現に存する」の意味)。また、確認の訴えというのは、給付の訴えに比べて、強制執行ができないという点で弱い力しか持たない判決しかもらえないので、できれば給付の訴えの方が望ましいという理由もあります(「直接かつ抜本的な云々」の意味)。

 立法不作為が憲法違反であると主張する裁判は、今までは「確認の利益」がないとして訴えが認められていませんでした。最高裁判所のいう「確認の利益」を満たす訴えが難しかったからです。

裁判所の判断
 今回の事件でも、3つの確認の訴えのうち、2つは「確認の利益」で切られています。
 まず、「平成10年以前の公職選挙法が違法であることの確認」は、過去の法律関係を確認するものなのでダメ、とされました。
 「現在の公職選挙法が違法であることの確認」も、「確認の利益」がないとされています。例えば、外国に住む日本人に選挙権を与えるという改正をしなかったこと(立法不作為)が憲法違反だとしても、彼らがすぐに投票できるようになるわけではありません。法律を作ることができるのは国会だけで、法律が作られないと、投票ができるようにはならないからです。投票の方法など細かい調整も必要です。ですから、立法不作為の憲法違反を確認しても、争いが「直接かつ抜本的」に解決するとはいえないのです。最高裁判所の判断の背後には、このような考慮があったと考えられます。
 そこで、立法不作為の憲法違反自体を確認するのではなく、「次の選挙の時には投票ができる」という地位があることの確認を求める方法を考えました(これを考え付いた弁護士さんは偉大だと思います。)。これならば、今の時点の地位が問題になっていますし、選挙権の有無について「直接かつ抜本的」に解決することができます。最高裁判所は、この確認の訴えについては「確認の利益」を認めました。これは、最高裁判所が救済のために頑張ったという面もありますが、弁護士のアイディア勝ちの面が強いといえるでしょう。


 田舎にはあんまり情報のソースがないので、曖昧な記憶を頼りに書きました。細かい点ははしょりましたし、嘘は書かないように注意しましたが、おかしい点はご指摘ください。

PR
Comments
Post a Comment
Name :
Title :
E-mail :
URL :
Comments :
Pass :   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
TrackBack URL
TrackBacks
僕が(一部)書いた本が出版されました
yanagawasemi
柳川範之+柳川研究室[編著]
これからの金融がわかる本
カレンダー
09 2025/10 11
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
l.c.oh
性別:
男性
職業:
法科大学院生
ブログ内検索
最新TB
カウンター
QRコード
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]