ブログ(仮)
Posted by l.c.oh - 2005.09.22,Thu
在外邦人選挙権の判決も今回で最後です。きょうは、15日のエントリでいうところの③の判断について取り上げます。
何が問題になったか
③国会が法律を改正しなかったという不作為を理由にして、賠償金が取れるか。
裁判所の判断
③取れる(賛成11対反対3)
詳細
事実関係については、15日のエントリを参照してください。
法律
立法の不作為はどのように裁判所に持っていくのかが難しい問題になること、「確認の訴え」は「確認の利益」がなかなか認めてもらえないことは、昨日見ました。そこで考えられた方法が、国家賠償を使う方法です。
国家賠償とは、公務員のしたことによって誰かが損害をこうむった場合、国が賠償をする制度です。その名もずばり、国家賠償法という法律があります。
この事件の場合は、公職選挙法を改正しなかったことによって、外国に住む日本人が精神的損害をこうむったので、その損害賠償(いわゆる慰謝料)を取れるかが問題になりました。
国家賠償で賠償金を取るためには、公務員のしたことが「違法」であることが必要です(国家賠償法1条)。立法不作為の場合は、国会議員が法律を作らないということが「違法」という評価を受けるかどうかが勝負の分かれ目になります。
では、どのような場合に立法行為が「違法」になるのでしょうか。最高裁判所は、以前、「立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているのもかかわらず国会があえて当該立法を行うような容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り」違法にはならないという判断をしています(昭和60年11月21日在宅投票制度廃止事件、憲法判例百選II・426頁)。こんな例はまず考えられないでしょう。これは、立法について国会が自由に決められる部分を非常に広く認めたもので、国会がひどいことをしたときは、基本的に選挙で問題を解決すべしという考慮に基づくものです(これについては、15日のエントリも参照してください。)。
一般的には、この昭和60年の判決によって、立法不作為で国家賠償が取れる可能性、ひいては憲法違反の判決を取れる可能性はほとんどゼロになってしまった、といわれていました。そのような状況の中ででたのが今回の判決です。
裁判所の判断
大方の予想を覆して、最高裁判所は国家賠償を認めました。外国に住む日本人の投票権についての立法不作為は、「例外的な場合」にあたると判断したのです。結果、立法不作為が違法とされ、慰謝料請求が認められました。
このような判断をするにあたって、最高裁判所は理由を2つ挙げています。1つは、外国に住む日本人にも選挙権が憲法で保障されていることが明らかであること、もう1つは、あまりに長いこと国会が何もしなかったことです。
2つ目について少し補足をしておきます。法律を作るには、細かい調整をしたり討議をしたりとそれなりに時間がかかります。そこで、憲法違反の状態が生じていても、国会が法律を作るのに必要な時間が経っていないときには、裁判所は憲法違反の判決を出さないようになっています。ただ、今回のケースは、事実上選挙ができる状態になってから10年以上国会が何もしなかった場合なので、あまりにひどい状況に最高裁判所が業を煮やして、「例外的な場合」にあたるとしたと思われます。
今まで「例外的な場合」にあたるとした判決はなかったので、これを認めたという点で今回の判決は非常に重要な判断といえるでしょう。「例外的な場合」が、昭和60年判決からみんなが考えていたほど極限的な場合だけではないことが明らかになったという点でも注目されます。
ちなみに、慰謝料は一人5000円です。安いですね。
ただ、泉裁判官の反対意見にもあるように、今回の原告の目的は、賠償金をとることではなく、憲法違反の判決をもらうことだったと考えられるので、金額はあまり問題ではないのです。(泉裁判官はさらにすすんで、「だったら賠償金は払う必要なんてないよね」といっています。この背後には様々な考慮があるのですが、長くなるので割愛します。)
長くかかってしまってすみませんでした。②と③の話は、法律を勉強したことのない人には若干分かりにくい話だと思います。どれだけまとめられたか自信がありません。分からない点はご指摘ください。
何が問題になったか
③国会が法律を改正しなかったという不作為を理由にして、賠償金が取れるか。
裁判所の判断
③取れる(賛成11対反対3)
詳細
事実関係については、15日のエントリを参照してください。
法律
立法の不作為はどのように裁判所に持っていくのかが難しい問題になること、「確認の訴え」は「確認の利益」がなかなか認めてもらえないことは、昨日見ました。そこで考えられた方法が、国家賠償を使う方法です。
国家賠償とは、公務員のしたことによって誰かが損害をこうむった場合、国が賠償をする制度です。その名もずばり、国家賠償法という法律があります。
この事件の場合は、公職選挙法を改正しなかったことによって、外国に住む日本人が精神的損害をこうむったので、その損害賠償(いわゆる慰謝料)を取れるかが問題になりました。
国家賠償で賠償金を取るためには、公務員のしたことが「違法」であることが必要です(国家賠償法1条)。立法不作為の場合は、国会議員が法律を作らないということが「違法」という評価を受けるかどうかが勝負の分かれ目になります。
では、どのような場合に立法行為が「違法」になるのでしょうか。最高裁判所は、以前、「立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているのもかかわらず国会があえて当該立法を行うような容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り」違法にはならないという判断をしています(昭和60年11月21日在宅投票制度廃止事件、憲法判例百選II・426頁)。こんな例はまず考えられないでしょう。これは、立法について国会が自由に決められる部分を非常に広く認めたもので、国会がひどいことをしたときは、基本的に選挙で問題を解決すべしという考慮に基づくものです(これについては、15日のエントリも参照してください。)。
一般的には、この昭和60年の判決によって、立法不作為で国家賠償が取れる可能性、ひいては憲法違反の判決を取れる可能性はほとんどゼロになってしまった、といわれていました。そのような状況の中ででたのが今回の判決です。
裁判所の判断
大方の予想を覆して、最高裁判所は国家賠償を認めました。外国に住む日本人の投票権についての立法不作為は、「例外的な場合」にあたると判断したのです。結果、立法不作為が違法とされ、慰謝料請求が認められました。
このような判断をするにあたって、最高裁判所は理由を2つ挙げています。1つは、外国に住む日本人にも選挙権が憲法で保障されていることが明らかであること、もう1つは、あまりに長いこと国会が何もしなかったことです。
2つ目について少し補足をしておきます。法律を作るには、細かい調整をしたり討議をしたりとそれなりに時間がかかります。そこで、憲法違反の状態が生じていても、国会が法律を作るのに必要な時間が経っていないときには、裁判所は憲法違反の判決を出さないようになっています。ただ、今回のケースは、事実上選挙ができる状態になってから10年以上国会が何もしなかった場合なので、あまりにひどい状況に最高裁判所が業を煮やして、「例外的な場合」にあたるとしたと思われます。
今まで「例外的な場合」にあたるとした判決はなかったので、これを認めたという点で今回の判決は非常に重要な判断といえるでしょう。「例外的な場合」が、昭和60年判決からみんなが考えていたほど極限的な場合だけではないことが明らかになったという点でも注目されます。
ちなみに、慰謝料は一人5000円です。安いですね。
ただ、泉裁判官の反対意見にもあるように、今回の原告の目的は、賠償金をとることではなく、憲法違反の判決をもらうことだったと考えられるので、金額はあまり問題ではないのです。(泉裁判官はさらにすすんで、「だったら賠償金は払う必要なんてないよね」といっています。この背後には様々な考慮があるのですが、長くなるので割愛します。)
長くかかってしまってすみませんでした。②と③の話は、法律を勉強したことのない人には若干分かりにくい話だと思います。どれだけまとめられたか自信がありません。分からない点はご指摘ください。
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