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Posted by - 2025.10.09,Thu
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Posted by l.c.oh - 2005.09.09,Fri
 「国民審査特集その1」で紹介した長嶺超輝(みそしる)氏ウェブページ、「忘れられた一票 」が、今日の朝日新聞の夕刊に取り上げられました。今回の選挙では、国民審査に対する関心もとりわけ高いようです。これも司法制度改革の賜物でしょうか…

 さて、今日は、2つほど簡単に判決を取り上げようと思います。
 1つは研修医が「労働者」とされたもの、もう1つは水俣病患者を救済したものです。


研修医は「労働者」か?

関係した裁判官
 中川了滋裁判官→「労働者」にあたる
 今井功裁判官→「労働者」にあたる

 この事件は、大学病院で研修をしていた医者が、労働基準法と最低賃金法にいう「労働者」に当たるかが問題になった事件です。もし研修医が「労働者」にあたるとなると、最低賃金は支払わなければなりませんし、労働時間などについても様々な決まりが適用されることになります。
 医師になる試験に受かった人は、何年か大学病院のようなところで研修をするのが普通のようです。この研修医は、名目上「勉強」ということになりますので、ほとんど給与は支払われておらず、非常に長時間にわたって「研修」をうけることになっているようです(小説『白い巨塔』でも描かれていました。医師になったばかりの友人もいつもこれを嘆いています。一般的なのかどうかははっきりとはわかりませんが。)。
 この事件で扱われた研修医のBさん(Bさんがすでに亡くなっているため、実際はその親が訴えました。)も、病院の休診日を除いて、毎日7時半から22時まで研修を受けていました。支払われていたのは、奨学金などの名目で、月6万円+当直手当1回1万円です。これは、最低賃金法の最低賃金よりずっと少ない額でした。
 最高裁判所は、「この研修医は、病院の指図に従って『働いていた』のだから、労働者だ」と判断し、実際支払われていた額と最低賃金の差額を、研修医の遺族に支払うよう命じました。

評価(私見です)
 最低賃金法にいう最低賃金は、文字通り「最低」で、一般的な給料に比べるとかなり低い額になっています。労働関係の法律の世界では、このような「最低」を法律で決めておくだけでは不十分だ、という意見が多く、標準的な場合を規制する、労働契約法という法律を作ろうという動きが非常に活発です(9月8日の日本経済新聞1面で取り上げられています。)。不十分だと言われる最低賃金法よりも低い賃金しか支払っていなかった病院が、差額の支払いを命じられたのは、当然だといえるでしょう。
 病院側としては、「研修医は勉強しにきているのだから、働いているわけではない→労働者ではない」ということを言ったのだと思います。しかし、普通の会社では研修は賃金を払いながらするのが当たり前ですし、時間も場所も病院の指示に従って病院のために活動しているのに、働いているわけではない、というのも何ともおかしな話です。研修医だけ特別扱いする理由は、僕の考える限りではないように思います。
 研修医制度については、今までも様々な批判がありました。この研修医制度に風穴を開けるものとして、この判決は重要な意味があると考えています。



水俣病患者の救済

関係した裁判官
 津野修裁判官

 いわゆる水俣病関西訴訟と呼ばれるもので、水俣病の裁判の中で最後に残った裁判です。
 この事件では、時効や、国・熊本県の責任などが問題になりました。

時効
 今回判決の出た患者は、有機水銀を流した会社を訴えたのがかなり遅かったので、民法の言葉をそのまま考えると、時効で賠償金が取れなくなってしまうものでした。この事件は不法行為に関するもの(不法行為については、昨日簡単に触れています。)で、相手が行為をしたときから20年、被害と加害者が分かったときから3年(どちらか早いほう)で時効になってしまいます(20年を「時効」と言ってしまうのは、実は正確な表現ではありませんが、細かくなるので割愛します)。時効は非常に強いもので、この数字自体を動かすことは困難です。水俣病は、体に水銀が蓄積して症状が現れてくるもので、症状が出てくるのがかなり遅い病気です。会社が有機水銀を流し始めたとき(または終わったとき)からみても、20年以上経ってから病気が明らかになる場合もかなりあるようです。そうなると、患者は救済されないことになってしまいます。しかし、病気の原因も加害者も明らかなのですから、何とか救済したい、という感情は、当然出てきます。
 そこで最高裁判所は、20年のカウントを始める時期を動かす、ということをしました。20年のカウントのスタート地点を、会社が水銀を流し始めたときでも、流すのをやめたときでもなく、水銀が蓄積して症状が現れたときに設定しました。これによって、遅くなってから訴えた人も時効に引っかからず、救済が受けられるようになったのです。
 水俣病訴訟では、最高裁判所は随分前から、時効を回避する方法を考えてきました。この判決は、このような流れの到達点といえます。

国・熊本県の責任
 患者たちは、国と熊本県が、有機水銀の垂れ流しをとめる措置をとらなかった責任も追及しました。この判決で、最高裁判所は、国と熊本県の責任を正面から認めています。
 国などを相手に責任を追及する裁判は、一般に非常に勝ちにくいと言われています。これは、裁判所が、国のどのような政策を採るかを決める権限を、かなり広く認めているためだと考えられます。これがいいか悪いかはそれぞれの価値判断ですが、この判決について言えば、国・熊本県の責任を認めたことは大きな意味があると思います。

 水俣病関西訴訟については、http://www1.odn.ne.jp/~aah07310/index-j.htmlに詳しく載っていますので、興味のある方はどうぞ。


 以上、簡単です(でもない?)が、今日はこんなところで。

 以前書いた通り、10日・11日は、更新ができません(ネット環境が用意できたら、ごく簡単な更新はするかもしれませんが。)。僕の国民審査特集はこれでほとんどおしまいです。お付き合いくださった方々、本当にありがとうございました。
 これからは、国民審査がメインのBlogではなくなると思います。でも、折に触れて、国民審査に関係のありそうなことを積極的に取り上げていこうと思いますので、ぜひごひいきに。


 11日は国民審査の投票日です。みなさま、価値ある一票を投じてきてください。
 衆議院選挙の投票も忘れずに!
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