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Posted by l.c.oh - 2005.09.29,Thu

小川 洋子

余白の愛


 初期の長編ですが、文章はかなり洗練され、雰囲気もかなり出来上がっている印象です。
 内容については、帯の「記憶と現実が溶け合うとき」というのが本書のテーマを端的に突いていると思うので、詳しく触れる必要はないでしょう。

 この小説の主人公は、突発性難聴という耳の病気を抱えています。この小説に限らず、小川氏は「病気」というものに強い関心を持っているようで、『完璧な病室』の弟や、『やさしい訴え』のチェンバロ製作者や、その他たくさんの病気の人が小説に登場します。『博士の愛した公式』の博士も確か病人です。で、小川氏はこの病との距離感が素敵です。正面の近い位置からぼんやりと眺めている感じで、負の感情も正の感情もあまり介在していない気がします。何というか、できてしまったものでも取り除くべきものでもなく、「ただそこに存在するもの」として捉えているような印象を受けます。うまく表現できませんが、個人的に好みにあった距離です。

 もう一人の重要な登場人物のYは速記者です。小川氏の小説には一風変わった職業の人も多く出てきます。今回読んだ一連の本でも、ロシア語の翻訳家から博物館技師まで、実にさまざまな職業の人が出てきますが、いわゆるサラリーマンは全くと言って良いほど登場しません。小説になりにくいのかもしれませんが。

 『余白の愛』自体の話をほとんどしていませんね。面白かったと思います。小川氏の静かでひんやりとした世界観が好みに合う方にはおすすめします。

9月29日 自宅で読了
★★★★☆
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