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Posted by l.c.oh - 2006.12.04,Mon
 マニアの道にどんどん分け入っていくことにしましょう。


 先日いただいたコメントを読んでいて、ふと疑問に思ったことがあるので、書いておきます。
 動産・債権譲渡特例法(「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」。長っ)の登記原因は、契約の法形式を反映しているのか、ということです。

 譲渡担保権の設定に際して、この法律を使おうと思うと、裁判の時点では、譲渡担保権者としては、担保権として認定して貰う必要があります。一方、譲渡担保権は、他の担保手段が尽きた時に使われるもの、という意識があるらしく、譲渡担保権設定者は譲渡担保権が設定されたという公示がされることを好まないといわれています。つまり、登記原因を「譲渡担保」ではなく、「売買」とするインセンティブがあり、不動産譲渡担保については判例上も、登記原因から形式的に契約の性質決定をするのではなく、実質的に判断するという扱いが定着しています。
 動産・債権譲渡特例法にはもう1つ使い方があって、特に集合債権を証券化する際に対抗要件具備を簡略化するという目的もあります。詳述は避けますが、この場合は、組成される証券のリスク限定のため、買受人としては、裁判の時点で間違いなく売買であったと認定される必要があります(いわゆる「真正売買」の問題)。一方、形式的には証券化であっても、実質的には譲渡担保である場合もあり(特に会社更生で、更正担保権として扱われるか否かについて大きな差が生じます)、これについても、契約の性質決定については、形式的ではなく、実質的に判断されています。

 端的に言えば、動産・債権譲渡特例法には、相互に流動的な2つの法形式について異なった要求が混在しているように思うのです。
 一般的には、譲渡担保は集合動産、証券化は集合債権を目的物とするので問題はさほどないような気もするのですが、集合債権譲渡担保も集合動産の証券化も十分にあり得るので、不動産登記と同様に、実質的な契約の性質決定の問題は残っているように思います。
 最近は、譲渡担保に対する負のイメージが徐々に後退しているという指摘もあり、こと集合動産・債権の譲渡担保については、有効な資金調達手法として積極的に活用されていると聞いたこともあります。だとすれば、譲渡担保なのに登記原因を「売買」とするインセンティブは、譲渡担保側では減少していると見ることもできそうです。しかし、証券化側では更生担保権としての扱いを潜脱するために、上記インセンティブは残っているでしょう。


 なにやら内容が混乱してきていますが、要は、動産・債権譲渡特例法上の登記原因には、不動産登記の登記原因(売買or譲渡担保)以上に信用できるのか、それとも同程度しか信用できないのか、ということが気になっています。
 理解してもらえるかな…
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Comments
無題
わかるようになるまでがんばります
Posted by ひじり - 2006.12.04,Mon 21:49:27 / Edit
無題
難しそうだね・・・。
Posted by せきやん - 2006.12.04,Mon 22:11:56 / Edit
レポート終了。
 俺の書き方も悪いと思いますが、法律についてのある程度の知識に加えて、証券化を理解するのに必要な限度で倒産法及びややマニアックな特別法についての知識が必要な問題です。

 試験の限度では、全くわかる必要のない問題だとおもいますよ>ひじり様

 俺も書いててよくわかんなくなってきてたよ>せきやん
Posted by l.c.oh - 2006.12.04,Mon 23:19:03 / Edit
無題
基本的に登記原因は、契約の法性決定(担保か、売買か)とは無関係であるということさえ押さえていれば何ら問題がないのではないでしょうか。

集合動産譲渡担保の場合において、「売買」と見せたいインセンティブについては、そのまま登記原因に売買とかけば良いでしょう。もっとも、実際に、売主?が倒産した場合において、裁判所によって、担保と扱われることもあるでしょうし、売買と扱われることもあるでしょう。それでも、ニーズは十分満たされていますよね。(但し、それで実務のニーズが満たされているかは怪しいですよ。というのは、企業の重要な資産が売却されていることが公示されてしまっているわけですから…。本来は、債務者が公示したくないという問題ですよね。この問題にも一定の手当てが為されているようです。)

ちなみに、これについても、会社更生にて生じる倒産隔離は問題になります(老朽化するようなものであればやばいですよね)。ですから、売買と表示する(買主がそうさせる)インセンティブは依然存在していると思われます(この場合に、担保と公示するならば、利害関係者である買主が「担保性」を肯定したことになっているので契約の法性が担保と決定される可能性は高くなります)。但し、売買と公示しても、先述したように、更正担保権か取戻権かは、取引の実質によって判断されることになります。

他方、後者の、証券化の事例の場合には、主に倒産隔離が問題になるでしょうが、これも、登記に如何なる記載があるかとは関係がありません。勿論、譲渡担保と記載すれば、担保権と法性決定され、隔離が失敗する可能性は非常に高いです(先述:但しこれも先と同じように、公示自体に実体法的な効力があるというわけではなくて、公示が、買主の担保の意思として捉えられてしまうという意味です)ので、その限りにおいて、「売買」と公示する(買主がそうさせる)インセンティブは存在するでしょう。

但し、だとしても、実際は、通常どおり真正売買の基準によって判断されることになりそうですね。

結局のところ、どちらの類型においても、倒産隔離は重要な問題となり得ます。そして、売買と公示したところで、売買(取戻権)と法性決定されることは全くありません。

すなわち、公示することによって確保されるのは、倒産時の「担保権」だけだということになりますよね。だとすれば、これは、不動産の譲渡担保の際の扱いと全く同じです。従って、この動産・債権譲渡特例法は、もたれている問題意識との関係においては、「集合的・流動的な物・債権について、少なくとも、不動産の場合と同程度の優先権を簡便に設定する」という意味しか持たないことになるかもしれませんね。

(もっともこの法律の意味は、周知の通り、以下の二つです。動産の譲渡に登記制度を創設することと。将来債権の場合は、債務者が不明の場合があって、その際に、従来の債権譲渡登記を具備できなかったという問題を手当てすること。)

結局、不動産の登記の場合と同程度にしか信用できないということです。
Posted by 通りがかりのサンコンさん - 2007.03.05,Mon 16:09:53 / Edit
>通りがかりのサンコンさん様
コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまって申し訳ないです。

詳細な解説、ありがとうございます。
法性決定との関係では、やはり不動産登記と同程度の推定力(というか、証拠力)しかもたないのですね。真正売買性が、債権譲渡特例法登記で少しでも認定しやすくなったのではないか、と思っていたのですが、やはり厳しいようですね。
大変参考になりました。重ね重ね、ありがとうございます。
Posted by l.c.oh - 2007.08.12,Sun 23:40:36 / Edit
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